「あの電線に触ったら死ぬかな」
君は指差す。
そこには1本だけが揺れ、
その周りに白いものが巻きついているかの様に見える。
「さあ?でも触れないじゃん」
「夢の無いことを言うなあ」
どっちがだ。
「だったらあそこに鳥が止まってくれないかな」
「感電死させたいの?」
「うん」
別に鳥が可哀想とかは思わない。
けど、そんな都合良く
あの電線1本に止まるわけがない。
しかも、揺れているのだ。
「無理じゃない?」
「だよね」
どうやらそれは分かっていたようだ。
「やっぱり自分で触った方がいいや」
分かって無い。
触ってどうする。
そして、
どうして今触ろうと電柱に登り始める。
残された私はどうする。
「んじゃ、かえ…」
「何言ってんの一緒に居てよ」
「否。とめなかった私に責任がくるのは否」
「何言ってんの?」
「死にたいんでしょ?」
「まさか」
「は?」
「興味本意よ。死ぬ気なんて更々ないわ」
「それじゃ上るな」
「うん、何か面倒になった」
こいつ、と腹が立ったが
此処は抑えておいた。
こいつはたまに正気じゃない。
いつも一緒だから良く知ってる、
つもり。
どうでもよくなったから
まだ電柱から降り終えてないあいつを
待たず歩き出す。
「ちょ、」
腹が立つ。
どうしてそんなネガティブなのに
みんなから好かれるのか。
私がやったら引くのに。
本気にされるのに。
まあ、本気だけどさ。
「馬鹿みたい」
それは誰にも届かず消える。
「愛スという意味を教えてくれ」
そういったら、
君は僕を押し倒して
狼の眼をした。
「好キという意味を教えてくれ」
そういったら、
君は僕を抱きしめて
スキダと言った
「ねぇ、行動じゃなく言葉で教えてよ」
「分からない」
「じゃあ、何故僕に好きというの?」
「好きだから」
ああ、不純。
元々純など求めてないが。
君に後ろから抱きしめられ、
君の吐息が僕の首筋にかかる。
そんな君が僕は嫌いじゃない。
「俺はお前が好きだ」
「僕は分からない」
僕の感情は間違っているのだろうか。
嫌いじゃない、
でも好きというのも違う気がする。
「僕は男だ」
「そんなお前が好きだ」
ああ、駄目だと思った。
きっと僕が君を好けない理由は、
君が男だからだ。
告白された時、
僕はきちんと男と言った。
そしたら、
男は男を愛せないという概念は捨てろと言われた。
別にそんな概念など持っていない。
「僕は君を愛せないよ」
僕は強く頬をぶたれた。