なんだっていいから笑って欲しいんだ。ちょっとでもいいから僕をみて微笑んで。何も言わなくていいから。寧ろ何も言葉なんて要らないから。こっちを向いて笑って笑って笑って笑って、僕を空気みたいに扱わないで。
「好きなんだ」
「(コードエラー)」
「ねぇ、聞こえてるの?」
「(コードエラー)」
会話のようで一方的な会話。僕の目はいけない。君の顔にモザイクをする。見えないように見てしまわないように君を隠すんだ。僕の目はいけない。僕の目はいけない。でも、僕の目がなければ君の笑った顔は見れないんだよ。ねぇ、僕はどうしたらいい。
「殺してもいいかい」
「(コードエラー)」
「それとも殺してくれるかい」
「(コードエラー)」
無機質。それは君の方ではなく僕自身。
「黙ってくれないかな」
「何よ甘ったれ」
「誰が甘ったれだって?」
「貴方以外に誰がいるっていうの?」
「君がいるだろう?」
「あら、私は甘ったれじゃないわ」
僕は甘えてなどいない。いつだって自分には厳しいし、甘えるだなんてことなど絶対にしない。そんな醜い行為誰がするもんか。
大体、なんだよ。いきなり現れた君に「甘え上手ね」だなんて言われなくちゃいけないんだよ。甘えてる?僕が?黙れ。
「貴方は甘ったれよ」
「黙れ」
「とっても甘え上手」
「君はどう…」
「どうして否定しないの?」
「貴方は甘ったれよ。ずるいのよ」
「…」
「ずるくて甘え上手」
そう言って淋しそうに去って行った。
もう考えることする嫌だった。
僕は甘えてなんかいない。それにずるいのはお互い様だろう?
「欲すればいい」
「要らないわ」
彼は笑う。彼は奪う。彼は、強欲。
しかし、彼は欲し手に入れたものを全て壊す。
「そうすれば私の気持ちが分かると思うのだよ」
「別に知らなくても生きていけるわ」
「それはどうかな、」
彼はわたしを見下ろして、大層不機嫌に微笑む。
わたしの首が彼の手に捕まる。
わたしは彼を見上げた侭、困難になっていく呼吸にただ苦しんだ。
「私は」
更に彼の手に力が入る。
徐々にわたしは体が浮くのを感じ、わたしは彼の手首にしがみ付いた。
「手に入れた綺麗なものほど、壊したくなるのだよ」
苦しむわたしに囁き手を離す。
やっとのことで呼吸が出来たわたしは只管呼吸を整えた。
整えて尚、わたしの前に立つ彼を見上げれば今までに見たことがないくらいの満足げな微笑み。
そして、彼はわたしに手を差し出す。
「私のものになりたまえ」
ああ、逃げられない。