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瞼を閉じた、世界が眠った。
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いつも誰か、簡単に大丈夫なんて言葉を口にする。『大丈夫、大丈夫』後丁寧に2度も同じことを言いながら、なんの根拠もないのに『大丈夫』と繰り替えす。


「他人の大丈夫を、  ぶつけないでほしい」


彼は苦笑いする。困ったときにいつも耳を触る癖、成人しても尚直らないのだろうか。小さい頃から一緒だったぼくにはまるわかりで、だからこそ苛々してしまう。みんな彼の表の顔だけ見ているからだ。悲しいと彼はズボンのポケットに手を入れる、怒っているときは喉を触る。きっと彼はそんな癖のこと、自分では分からないのだろう。彼はいつだって笑っている。ズボンのポケットに手を入れながら笑って、喉を触りながら笑って、耳を触りながら笑って。


「大丈夫と言った数だけ大丈夫になれるんだ」

「ならないよ」

「なるよ」

「大丈夫と言った数だけひとりになる」


彼は前髪を触る。こういうときは少なからず機嫌が悪くなっていっているときだ。だからと言って、彼は怒ったことは無い。前髪をいじりだすと、機嫌は凄く悪くなるのだが、それで怒ったことはなかった。彼はずっと笑っているんだ。


「あはは、そんなことはないさ。大丈夫は元気になる呪文みたいなものさ、自分の首をしめるようなことに使う奴は実はその強さ故の弱さに気づいて欲しい奴だけ。大丈夫って案外気合入るんだぜ?」


そういって彼は何度も、何度も、大丈夫大丈夫と繰り返しずっと笑っていた。ぼくの眼からは彼が泣いているようにしか見えなかった。最後の君の癖。大丈夫と言うときは必ず心は泣いている、本当は泣いてしまいたい時。そんな彼を見てぼくは、彼の代わりにと言わんばかりに泣くことしかできない。そんなぼくを見てかれは「ありがとう」とまた笑った。





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