あの日あなたに出会った。
そこらじゅうに張り巡らされた電子の回線で、あなたと会った。そして、あなたはあなただった。
>はじめまして
>はじめまして。
他愛の無い会話。日常的な会話。全ての人に対応した全ての人の共通の会話。シンプルで感情が見えない会話。音の無い会話。
>死にたいね
>死ねば?
>優しくないね
>生憎、私にはそんなの無いわ
私は私を否定して私を肯定させてきた。誰だってそうだと思っていた。私が死んだところで私には関係なく、私が私でなくなるだけだと思っていた。
けど、あなたはあなただった。
あなたはあなたをあなたとして生きてきた。あなたはあなたで居るのが好きだった。でも同時に嫌いだった。あなたはあなたを認める度、あなたでいられなくなった。
>変わってるね
>あなたもでしょ
>そう?言われたことないや
私は神様を信じなかった。でも、あなたは信じていた。
私は私じゃなかった。でも、あなたはあなたでした。
>また会えたらいいね
>もう落ちるの?
>うん そろそろ僕は落ちる
>そっか
>ね、
>何?
>また会えたらいいね
あなたはそう言うと居なくなった。
次の日、テレビで自殺のニュースを見た。若い男性で、近所の人は良い人だったのに、とインタビューに答えていた。
あなたはあなたで無くなった日。
私は私になることが出来た。
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