「欲すればいい」
「要らないわ」
彼は笑う。彼は奪う。彼は、強欲。
しかし、彼は欲し手に入れたものを全て壊す。
「そうすれば私の気持ちが分かると思うのだよ」
「別に知らなくても生きていけるわ」
「それはどうかな、」
彼はわたしを見下ろして、大層不機嫌に微笑む。
わたしの首が彼の手に捕まる。
わたしは彼を見上げた侭、困難になっていく呼吸にただ苦しんだ。
「私は」
更に彼の手に力が入る。
徐々にわたしは体が浮くのを感じ、わたしは彼の手首にしがみ付いた。
「手に入れた綺麗なものほど、壊したくなるのだよ」
苦しむわたしに囁き手を離す。
やっとのことで呼吸が出来たわたしは只管呼吸を整えた。
整えて尚、わたしの前に立つ彼を見上げれば今までに見たことがないくらいの満足げな微笑み。
そして、彼はわたしに手を差し出す。
「私のものになりたまえ」
ああ、逃げられない。