「私は否定される事が嫌いだ」
何故、私は彼にそう言ったのか分からない。
彼を見たら急に言いたくなった。
そんな私に驚く事はなく淡々と私に云う。
「誰だって嫌だよ、そんなの」
ほら、否定した。
私はそれが嫌いなんだ。
その予想外の回答に反応出来ない自分がもっと嫌いだ。
「けど、それを受け止められる奴も居るだろう?」
「否定されるのが好きな奴なんて居ない」
ほら、また否定した。
もう自分が嫌になる。
私は俯いて必死に涙を堪えるしかなかった。
彼は私をずっと見ていた。
「何故、そんなに否定を厭がる」
何故…?
何故だろう、考えた事も無かった。
唯、否定されるのは私が許せなかった。
その言葉を受け止められない私が居た。
ああ、これがプライドというのだろうか。
「やっぱりいいよな、この曲」
貴方が笑う。
愛しい程、綺麗に魅力的に。
少しずつ貴方に惹かれていった。
仕草、口調、性格、思考、笑顔…。
「うん、いいよね。特にあの曲」
本当にその曲が好きか如何か分からない。
もしかしたら、貴方が好きだから好きなのかもしれない。
貴方が好きだから、貴方の好きな物は全て好き。
でも、所詮共通の話題でしか話が弾まない。
貴方にとって特別ではない私はこれ以上話す権利は無い。
何も言わず、私にそう言うだけで去ってゆく貴方。
「今度また違うCD貸して?」
「ああ、今度な」
ああ、そんなそっぽを向いて私と会話しないで。
私をもっと見て。
何て言えない。
貴方にはもっと正式に貴方を見ていてくれる人が居るから。
ああ、なんて痒い関係。