夢を食べます、と
メールが1通届いていた
【おいしいの?】
【とても美味ですよ】
送信してすぐ、
それは返された
声に出してみた
「食べたい」
【僕のをあげましょうか】
すぐに返ってきた
私の携帯に、
会話でもしてるかのように
「いいの?」
【僕のでよければ】
「どうやって食べるの?」
【貴女が苺を食べるように】
「苺みたいに小さいの?」
【僕のはね】
「私のは?」
【分からない】
「今夜食べてくれる?」
【貴女さえよければ】
携帯の受信ボックスには
8通の私からのメール
メールは2回目に開くと真っ白だった
全て私からの空メール
夜がきた。
でも寝れなかった
眠くなかった
寝たくなかった?
朝がきた。
夢は見なかった
寝ることが出来なかった
苺らしき酸味が
口内に広がっていた
始めての夢の味
メールがきた。
「あの電線に触ったら死ぬかな」
君は指差す。
そこには1本だけが揺れ、
その周りに白いものが巻きついているかの様に見える。
「さあ?でも触れないじゃん」
「夢の無いことを言うなあ」
どっちがだ。
「だったらあそこに鳥が止まってくれないかな」
「感電死させたいの?」
「うん」
別に鳥が可哀想とかは思わない。
けど、そんな都合良く
あの電線1本に止まるわけがない。
しかも、揺れているのだ。
「無理じゃない?」
「だよね」
どうやらそれは分かっていたようだ。
「やっぱり自分で触った方がいいや」
分かって無い。
触ってどうする。
そして、
どうして今触ろうと電柱に登り始める。
残された私はどうする。
「んじゃ、かえ…」
「何言ってんの一緒に居てよ」
「否。とめなかった私に責任がくるのは否」
「何言ってんの?」
「死にたいんでしょ?」
「まさか」
「は?」
「興味本意よ。死ぬ気なんて更々ないわ」
「それじゃ上るな」
「うん、何か面倒になった」
こいつ、と腹が立ったが
此処は抑えておいた。
こいつはたまに正気じゃない。
いつも一緒だから良く知ってる、
つもり。
どうでもよくなったから
まだ電柱から降り終えてないあいつを
待たず歩き出す。
「ちょ、」
腹が立つ。
どうしてそんなネガティブなのに
みんなから好かれるのか。
私がやったら引くのに。
本気にされるのに。
まあ、本気だけどさ。
「馬鹿みたい」
それは誰にも届かず消える。